安全運転講習とは、ドライバに交通ルールや危険予測の知識・技能を身につけてもらい、交通事故を防ぐことを目的とした教育プログラムです。
座学や実習、ゲーム形式のもの等、さまざまなタイプがあります。
道路交通法第70条では、運転者に対し安全運転の義務が定められています。
参考:e-Gov法令検索_道路交通法第70条
これは個々のドライバに課せられた義務ですが、社用車を運用する企業にとっては、従業員一人ひとりがこの義務を果たせる環境を整えることが組織としての責任となります。
業務上の運転は時間に追われる場面が多く、無意識のうちに急いだ運転になってしまうこともあります。
日常的に運転するからこそ、慣れを防ぎ、安全運転を意識する機会として講習は重要な役割を果たします。
「安全運転講習」と混同されやすいものに「安全運転管理者講習」があります。両者は似た名前ですが、性質は異なります。
|
項目 |
安全運転講習 |
安全運転管理者講習(法定講習) |
|
対象者 |
従業員・運転者(任意で選定) |
選任された安全運転管理者 |
|
実施主体 |
民間の自動車教習所・研修事業者等 |
各都道府県の公安委員会等 |
|
目的 |
従業員全体の運転技能・意識の向上 |
管理者の法令知識・管理能力の維持 |
|
義務の有無 |
法的義務なし(任意) |
年1回の受講義務あり |
|
費用相場 |
内容・規模による |
管理者5,100円程度、副管理者3,000円~(地域差あり) |
|
内容 |
座学・実技・オンライン等 |
法令改正・管理実務に関する講義 |
法定講習は管理者の知識を最新に保つもので、現場のドライバの運転を直接変えるものではありません。
組織全体の事故を減らすためには、管理者向けの法定講習と、ドライバ向けの安全運転教育を組み合わせて取り組むと良いでしょう。
数ある講習から自社に合うものを選ぶためには、次の4つの視点で整理すると判断しやすくなります。
まず、年間で掛けられる教育予算を確認します。
集合型の実技講習は、受講者一人ひとりに対してきめ細かな指導ができる一方で、費用は高くなりがちです。
一方、オンライン講習は開催者の移動費や拘束時間を抑えられるため、低コストで多人数に展開しやすいというメリットがあります。費用と効果のバランスを見ながら、無理なく続けられる範囲を見極めることが大切です。
安全運転講習は、「誰に受けてもらうか」によって選ぶべき講習が変わります。
新入社員なら基礎講習、ベテランならブラッシュアップ講習、事故を起こした社員なら再発防止講習、というように対象者の状態にあわせましょう。
全員に同じ講習を一律で課すのではなく、使い分けた方が当事者意識を持ってもらいやすく、効果的です。
講習を実施するにあたり、集合型・実技型・オンライン型・イベント型のどれが自社に適しているかを考えます。
現場での体感を重視するなら実技型、受講機会を確保しやすくしたいならオンライン型、というように、自社の働き方や拠点の配置にあわせて選びます。
見落とされがちですが、重要なのが「効果をどう測るか」という視点です。
講習を受講させて終わりでは、安全運転の継続が難しくなります。
事故件数やヒヤリハットの報告数、後述する走行データのスコア等、あらかじめ測定する指標を決めておくことで、講習の効果を検証し、次の施策につなげられます。
安全運転講習は、受講者の経験や立場によって適した内容が変わります。
代表的な4つの分類を見てみましょう。
業務での運転に不慣れな新入社員を対象とした講習です。
社用車の取扱方法や、業務中に起こりやすい事故のパターン、会社の運転ルール等、社会人として必要な運転の基礎を固めます。 経験が浅いうちに正しい知識を身につけてもらうことで、その後の事故リスクを下げる効果が期待できます。
ある程度の運転経験を持つ社員を対象に、慣れによって身についた運転の癖を見直す講習です。
運転にある程度慣れ、まだ事故を起こしていない層ほど、潜在的なリスクを抱えていることがあります。
最新の法改正情報を踏まえながら、安全運転の基本を確認しましょう。
過去に事故を起こした、あるいはヒヤリハットを繰り返している社員を対象とした講習です。
講習では、事故の原因を振り返り、同じ過ちを繰り返さないための具体的な対策を考えます。
この講習は、行動を変えるきっかけをつくることに重きを置く点が特徴です。
社内で安全運転教育を担う立場の方を対象とした講習です。
指導する側として、教え方や評価の視点を学びます。
指導者を育てることで、外部講習に頼りきらず、社内で継続的に教育を回せる体制づくりが期待できます。
座学では、運転に関する知識を体系的に学びます。
実技では、教習所のコース等で実際に車を動かしながら技能を確認します。
急ブレーキ時の車の挙動を体感したり、車両感覚をつかむ狭路走行を行ったり、死角を実際に確かめたりと、座学だけでは得られない学びが中心です。
また、VRゴーグルを用いた安全運転講習もあります。
360度のVR映像によって事故の危険な場面を疑似体験できるもので、実車では再現が難しいシーンを体験できるため、危険予測のトレーニングとして活用されています。
近年は、eラーニングやオンデマンド動画によるオンライン講習も広がっています。
各自が好きな時間に受講できるため、勤務地が分散している企業や、同日同時間に全員を集めるのが難しい場合に適しています。
法令知識の確認テストや事例映像を用いた危険予測等、座学的な内容との相性が良い形式です。
例えば、従業員向けの交通安全eラーニングは、オンデマンドの動画配信で各自が自分のペースで受講できる形式で、集合研修の時間が取りにくい企業でも導入しやすいのが利点です。
近年注目されているのが、ゲーム感覚で安全運転に取り組めるイベント形式です。
走行データを活用したコンテストやチーム対抗の取組等、参加者が楽しみながら自発的に安全運転を意識できる点が特徴です。
座学や実技のように知識・技能を一方的に学ぶのではなく、「学んだことを実践する場」として機能します。
また、イベント形式は単独で参加するだけでなく、座学・実技・オンラインの3つと組み合わせることで、より効果を高められます。例えば、座学や実技で知識・技能を身につけたうえでイベントに参加すれば、学んだ内容を日常の運転で実践し、スコアという数値で定着度を確認できます。
「学ぶ→実践する→振り返る」というサイクルが回ることで、講習が一度きりで終わらず、行動の変化につながりやすくなります。代表的な例が、あいおいニッセイ同和損保の「セーフタウンドライブコンテスト」です。
自治体や警察等と連携して実施される参加型の無料イベントで、3~5名のチームでエントリーし、取得した走行データを基に計測した安全運転スコアを競います。
3~5名のチームでエントリーし、取得した走行データを基に計測した安全運転スコアを、コンテスト形式で競います。参加者が安全運転に取り組むことで、地域の交通安全につながる仕組みです。
急アクセルや急ブレーキ等の指標を基に、実際の運転内容がマップ上に可視化されるため、自分の運転を客観的に振り返ることができます。講習で学んだ知識を日常の運転に落とし込む実践プログラムとして最適です。
講習前と講習後でスコアを比較すれば、行動が実際に変わったかどうかを確認できます。
講習後は意識が変わっていても、長年染み付いた運転の癖は自分では気づきにくいものです。
実際の運転ごとに安全運転スコアが表示されるため、講習内容を意識して運転することで、本当に改善できているのか、見落としている課題はないか等を可視化でき、学んだ内容を着実に身につけることができます。
また、企業側にとっても、実施した講習が実際に定着しているかを数字で把握できるため、効果を見極めやすくなります。
セーフタウンドライブコンテストで使用する安全運転スコアは、アクセル・ブレーキ・コーナリング・スピード・スマートフォン使用の5項目で評価されます。
実際の走行データがマップ上に表示され、危険運転があった場所にはその内容が表示されます。どういう場面で起きたどのような行動を改善すべきかが一目でわかるため、次回の講習や個別指導のテーマ設定にも活用できます。
参加は3~5名のチームエントリー形式が基本です(イベントによって異なる場合があります)。
チームメンバーは常にお互いのスコアをランキング形式で確認することができ、最終的にはチーム対抗で安全運転スコアを競います。
職場の同僚や部署のメンバーでチームを作って参加できるため、お互いに声を掛けながら安全運転に取り組むことができ、社内交流のきっかけになったという声もあります。
セーフタウンドライブコンテストにエントリーすると、手のひらサイズの計測用端末(テレマティクスタグ)が貸与されます。
両面テープでダッシュボードに設置し、専用アプリ「Visual Drive」と接続すれば準備完了です。
あとは普段どおりに運転するだけで走行データが自動で取得されていくため、業務の負担にもなりません。
なお、あいおいニッセイ同和損保の保険に加入していなくても参加できます。
セーフタウンドライブコンテストは、1か月間の運転が対象となります。
セーフタウンドライブコンテストに参加することで、ゲーム感覚で楽しく安全運転に取り組むことができ、ひいては自分の取組がまち全体・地域全体の交通安全に貢献することにもつながります。
急ブレーキや急加速が減ると、燃費が改善し、CO2の削減にもつながる効果もあります。
安全運転講習は、従業員の交通事故を防ぎ、企業をリスクから守るための重要な取組です。
講習には、新入社員向けのビギナー講習から事故を起こしたことのある人向けの事故再発防止、指導者向け等複数の種類があり、対象者に応じて選ぶことが効果を高めます。
そして、講習内容を定着させるのにおすすめなのが、セーフタウンドライブコンテストへの参加です。
通常の講習に手間なく参加しやすいセーフタウンドライブコンテストを組み合わせることで、講習で学んだ内容を、楽しみながら具体的に身につけることができます。
民間の安全運転講習そのものに、法的な受講義務はありません。
ただし、一定台数以上の車両を使用する事業所では安全運転管理者の選任が義務付けられており、選任された管理者には年1回の法定講習の受講義務があります。
従業員全体への講習は任意ですが、事故防止の観点から実施が推奨されます。
法令知識の習得や危険予測の学習等、座学的な内容ではオンライン講習でも十分な効果が期待できます。
各自が都合の良い時間に受講できるため、拠点が分散している企業でも導入しやすいという利点があります。
一方で、車両感覚や挙動を体感するような実技は対面形式のほうが適しているため、目的に応じて使い分けると良いでしょう。
低コストで導入可能なオンライン講習や自治体等が開催するイベントに地元企業として参加するのがおすすめです。
例えば、セーフタウンドライブコンテストは同僚等とチームを組んで参加できる無料イベントです。
専用車載器とアプリだけで参加でき、安全運転の取組が地域貢献にもつながるため、中小企業の安全運転教育として導入しやすいでしょう。
事故件数やヒヤリハットの報告件数の推移を追うのが基本です。
加えて、セーフタウンドライブコンテスト等を活用し、安全運転スコアを取得できれば、講習の前後でドライバの行動変化を数値で比較できます。
全体的な傾向を見ることも重要ですが、急ブレーキ防止等テーマを絞って取り組むと、意識しやすく、結果も把握しやすくなります。